第三回ゲスト 梅津和時さん(サックス、クラリネット奏者)

梅津和時さん

KAZUTOKI UMEZU

わたし(秋山羊子)が大好きな人をお招きして、そのゲストの方にとっての「人生の一枚」をめぐって対談をするコーナーです。

第三回目にお招きする方は、梅津和時さんです。
梅津さんはわたしに勇気をくれた人です。そして今でもくれています。
梅津さんからわたしは音楽だけじゃなくいろいろ影響を受けています。
梅津さんとの共演でわたしは即興の面白さを教えてもらいました。
梅津さんは自然で、ニュートラルで、とてもフットワークが軽くて、雑種で、リズムの感じ方が横ノリで、そしてとてもお茶目な人です。
そんな梅津さんをお迎えします。

梅津和時さんが持ってきた一枚
SAVINA YANNATOU - Terra Nostra

SAVINA YANNATOU - Terra Nostra

羊子(以下、Yoko):一曲目を聴いた瞬間に惹き込まれました。切ないです。声がとてもすてき。いいですね!音楽ってすごいな。聴いた瞬間に持っていかれるんだもの。サヴィーナさんはギリシャの歌手なんですよね。梅津さんがサヴィーナさんを知ったきっかけは何だったんですか?

梅津和時さん(以下、Umezu):2003年にドイツのメールス・ジャズ・フェスティバルにKIKI BANDで出た時に別な日に出演しているのを聴いて、とても素晴らしく、一発で持っていかれました。そのまま夢遊病者のようにCD売り場にふらふらっと行って買ってきたのがこのアルバムなんです。このCDはその時の演奏にすごく近いものだと思います。

Yoko:へー。そうだったんですか。わたしにとってギリシャの音楽ってあんまりなじみがなかったんですけど、このCDを聴いていろいろな音楽を思い出しました。

Umezu:昔からなぜかギリシャの音楽に惹かれていて「その男ゾルバ」とか「レンベティカ」というジャンルのギリシャ民謡なんかを聴いていました。サヴィーナさんの音楽は、よりソフィスティケートされているというか、昔の音楽はここまで透明感のあるものではなかったのですが、その透明感と民族音楽の持つ独特な泥臭さが心地よく混ざりあってていたのが一番好きになったところでしょうね。

Yoko:あー何かわかります。4曲目で何かまるでDJのスクラッチノイズみたいに聴こえる音があったんですけど、これは何なのかなぁ。面白いなって思いました。新感覚です。

Umezu:パーカッションはじめ、演奏人が名手そろいでいろんな音を出していました。

Yoko:そうなんですか。ライヴでこういうのあると楽しいですね。5曲目はブルガリアンヴォイスを思い出したし8曲目はアイヌの歌手の安東ウメ子さんを思い出して、13曲目はジェフ・バックリーが影響を受けたっていうアゼルバイジャンの歌手のアリム・ガスモフさんを思い出したりしていました。

Umezu:5曲目、8曲目、13曲目、15曲目の朗読、17曲目はLamia Bediouiという別の女性が歌っていると思います。彼女はモロッコのベルベルのお姫様、と紹介されていたように思うのですが、間違っていたらごめんなさい。サヴィーナさんには悪いけど、歌声の奇麗さ、という事に関してはラミアさんのほうがとろけるように素晴らしかったです。

Yoko:あ、本当だ。別の方も歌ってるんですね。

Umezu:ラミアさんはイスラム圏、アゼルバイジャンはキリスト教、でも中東という意味では発声が似ているかもしれませんね。この伸びる声が水紋が静かに広がっていくように、口から体中、そして空間を震わせていく様が目に見えるよう。

Yoko:水紋…いい表現ですね。わたしはラミアさんの声に力強さ、生命力みたいなのを感じました。11曲目の出だしのベースと歌だけの雰囲気もとても好きです。これはサヴィーナさんですね。

Umezu:歌の可能性をいろいろ感じます。こぶしが自然で良いですね。演奏はすごく気楽な感じがして、こういうのって嬉しいです。コンサートより裏庭とかあったらそういうところで聴きたいです。

Yoko:いいですね。わたしもこぶしがいいなって思いました。梅津さんってとても庶民っぽいものを愛してるって感じます。音楽はみんなのものって風に。そこが好きです。梅津さんの目線が好きです。あと14曲目なんてもう動物的、野性的!本当にサヴィーナさんは何かがのりうつったようで同じ人が歌ってるように感じない。自由を感じました。

Umezu:巻上公一さんとか、東京ナミーさん、ローレン・ニュートンさんみたいです。ヴォーカルのインプロをやる人にはけっこうこういう歌い方は多いので、そういう事もされているのでしょうね。

Yoko:梅津さんは人生の一枚っていうほど強く思ってるレコードはないってことで、わたしに聴いてもらいたいものということで選んでくれたんですよね。サヴィーナさんとわたしに何か共通点があるって感じたからですか?

Umezu:共通点があるとは、まだそんなには感じていません。私が好きな歌手の方に私の好きな別な歌い手、今回の場合はサヴィーナ、ラミアのふたりを紹介したかった、という事です。まずは曲の美しさ。素晴らしい曲がいっぱいあります。個人的には2、3、6、8、13、17曲目が特に好きです。いや、ほとんど全部好きかな。そしてバンドとしてのありかたがすごく好きです。的確なところに的確な音を出す人がいる。無理がなく、余分な主張がなく、みんながその曲を愛しているのがよくわかります。たぶんアレンジャーではなく、自分たちで音を作っているように感じます。民俗楽器を使っていても単純にギリシャの民謡にならず、安易なポップスにもなっていないところも好きです。そしてその中で楽しく遊んでもいて、当然それに必要な素晴らしいテクニックも持っています。さらに言えば、ラミアをフィーチャーできるサヴィーナの度量の大きさも好きです。

Yoko:梅津さんに好きな歌手と言っていただいてとても嬉しいです。わたしはリアリティのある音楽をやりたいと思ってて、「民俗楽器を使っていても単純にギリシャの民謡にならず、安易なポップスにもなっていない」っていうのはリアリティってことなのかなって思いました。きっとサヴィーナさんは本当に人に喜んでもらいたいって心から思って捧げてる人なんですね。わたしもそうありたいです!

梅津和時さんウェブサイト「Site u-shi」 http://www.k3.dion.ne.jp/~u-shi/

(2008.3.27)

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