YOKO's Cafe Talk特別編
小山卓治さん(ミュージシャン)との対談 01

小山卓治さん+羊子

TAKUJI OYAMA

YOKO's Cafe Talk特別編は「Letter/羊子からの手紙」の登録をしている方だけに公開しています。

今回の対談は、小山卓治さんのオフィシャルファンコミュニティー「ONE」で発行されているウェブマガジン「eyes Vol.14 春号」に掲載されたものです。 「ONE」は有料の会員制ファンサイトだから一般公開されてないの。対談がとってもいい感じで楽しくて、実際アップされたのを読んでますます「わたしのファンの人にも読んでもらいたいな〜!」って小山さんに素直に伝えたの。 そうしたらすぐに「秋山さんのファンの人たちにも読ませてあげてください。」って対談のテキストと写真を送ってくれたの。とてもうれしかった。
こうして特別に君に読んでもらえることになりました。どんな風に感じるかな。感想、知りたいな。

以下ところどころ注釈を加えながらほぼ原文のまま掲載します。

eyes | Friends Vol.2
〈Beast meets Beauty #3〉で初めて共演し、〈Party! 25th anniversary Live〉にもゲストとして出演してくださった秋山羊子さんとの対談が実現しました。 ミュージシャン同士ならではの深い話にも及んだ対談をお楽しみください。

卓治の所属事務所、りぼんのオフィスに秋山さんをお招きして、〈Beast meets Beauty #3〉のライヴ映像を流しながら、対談はスタートしました。 仕事をしていたりぼんの社長(ボス)も、途中で参加します。秋山さんは、近所で買ったおにぎりといなり寿司をお土産に持ってきてくれました。


※この日のライヴはまず小山卓治さんがソロで歌い、そのあと秋山羊子with梅津和時、最後に3人でセッションという流れでした。


卓治のステージを聴きながら



小山卓治さん(以下、Takuji):この時、楽屋では何やってたの?

羊子(以下、Yoko):ストレッチしてました。

Takuji:本番前はいつもやるの?

Yoko:いつもやりますね。やっぱり違います。

Takuji:どんな感じで?

Yoko:着替えたりしながら20分くらい。小山さんはやりますか?

Takuji:軽く体をほぐすね。ヨガみたいな感じ?

Yoko:そうですね、なんちゃってヨガみたいな。

Takuji:(笑)。体に力が入っちゃうと喉にも負担がかかるからね。


Yoko:小山さんのギターって、ちっちゃいですね。

Takuji:これはタカミネのわりと初期のやつで、昔のマーチンのモデルなんだ。色々試したんだけど、このギターだけが特別鳴りがよくて。ピックアップがすごくいいんだよ。個人的には一番好きなんだ。ずいぶんたってから同じタイプのギターを買ったんだけど、ピックアップの仕様が変わってて全然音が違ってた。だからタカミネの製造元に連絡して、前のピックアップと交換してもらったんだ。それでかなり近づいたんだけど、やっぱりボディの鳴りとかで音のキャラは違うな。まあでも、アコギはやっぱりマーチンやギブソンなんかをマイクで拾う方がアコギ本来の音が取れるよ。エレアコは、エレアコって音だからね。


Takuji:この間、大阪のシャングリラってところでやったんだけど、そこにはアップライトのピアノがあるんだ。グランドピアノとは全然音が違うんだね。秋山さんはアップライトを使うこともあるの?

Yoko:アップライトの方が多いかな。でもステージだと、壁に向かっちゃうから。

Takuji:そうだね。大阪では下手奥にセッティングしたんだけど、どうしても死角ができちゃう。

Yoko:味はありますよね。

Yoko:そうだね、シャングリラのは、ちょっと音が固かったけどね。どっちが使いやすい?

Yoko:お客さんのことを考えなかったら、アップライトの方が鍵盤が軽くて好きなんです。

Takuji:アップライトの方が全般に軽いの?

Yoko:軽いことが多いですね。

Takuji:ピアノって、ものによってすごく違うよね。弾きやすい時もあれば、鍵盤が重たいこともあるし。

Yoko:スイッチって、どうですか?

Takuji:わりと弾きやすい方かな。

Yoko:私は、アップライトの、あんまり立派じゃない音が好きなんです。

Takuji:(笑)。分かる分かる。グランドピアノも、短いのと長いのとあるじゃない? あれ、何て言うんだっけ?

Yoko:(笑)。

Takuji:立派なコンサートホールとかに行くと、やたらと長いじゃん。触ったら怒られそうな。

Yoko:(笑)。弦が長いと、音が豊かになるんでしょうね。短いとアップライトピアノに近づくんでしょうね。

Takuji:昔、ジョン・レノンが、オノ・ヨーコにプレゼントしてもらったスタンウェイの白いグランドピアノで〈イマジン〉をレコーディングしたんだよ。すごい憬れて、部屋にジョンがピアノを弾いてるポスターを貼ったりしてたんだ。埼玉にジョン・レノンミュージアムがあって、そこにその白いグランドピアノが置いてある。

Yoko:そうなんだ。

Takuji:“触っちゃ駄目”って書いてあるんだけど、ちょっと触ってみて「ジーン」とかしてた。

Yoko:(笑)。白いピアノって、なんかいいですね。

Takuji:日本だと、どうしても昔の歌謡曲って感じになっちゃうけどね。

Yoko:小山さんだったらだいじょうぶ。

Takuji:(笑)。部屋にグランドピアノを置いて曲を作るっていうのが、憧れなんだけどね。普通のマンションだったら、床が抜ける(笑)。

Yoko:(笑)。曲を作る時は、ギターで作ったりピアノで作ったりですか?

Takuji:曲のテーマを思いついた時、「この曲はピアノだな」と思ったら、まずピアノに向かってみる。ピアノならではのコード進行ってあるじゃない? ギターの場合は押さえなきゃいけないけど、ピアノは音が並んでるから、どこを弾いてもいい和音になれば、それで曲が生まれたりする。秋山さんは、全部ピアノで作るの?

Yoko:そうですね。ギターは好きなんですけど、弾けないんです。

Takuji:どういう時に曲は生まれる?

Yoko:何となく練習でピアノを触ってて、「アッ」って感じの時があって。そういう時の方がいい曲になるっていうか。こねくり回すより。

Takuji:作るっていうより、できるって感じだよね。

Yoko:そうですね。


〈Gallery〉を聴きながら



Yoko:イントロのこのコード進行、すごい好き。

Takuji:キーが“G”で、“Cm(6)”。“C”の6度の音“A”を、“Cm”に足すんだね。

Yoko:ギターならではの響きですね。

Takuji:そうかもね。それに、ピアノでスリーフィンガーしないもんね(笑)。

Yoko:(笑)。

Takuji:最近めっきりスリーフィンガーで弾くやつが減ってきたって話を友達としたんだ。

Yoko:できないんじゃないですか?

Takuji:できないし、知らないのかな。

Yoko:むずかしいんですか?

Takuji:中学の頃にギターを弾き始めて、もてたい一心で毎日練習してて。1回覚えちゃえば、指が勝手に動いてくれるから。

Yoko:もてたいって、ちゃんとした動機ですね(笑)。

Takuji:(笑)。ものすごいパワーだよ。


Takuji:最初にピアノを弾き始めたのはいつなの?

Yoko:小学校の時。その前は家にピアノがなくて、エレクトーンを弾いてました。ヤマハ音楽教室に行ってたんです。小学校に入る前、4歳から。

Takuji:へええ。

Yoko:で、小学校に入ってピアノを買ってもらいました。

Takuji:じゃあ、バイエルとかソナチネとか?

Yoko:一通りやりました。先生がすごい熱心な人で。小山さんはピアノ歴は?

Takuji:子供の頃にちょこっとだけ習ったことがあったんだけど、全然ヘタクソで譜面も読めなくて。ギターを弾き始めて、コードというのを覚えて、改めてピアノの楽譜を見たら、意外と分かったっていうのがあったな。初めて曲を作ったのは?

Yoko:ヤマハ音楽教室で作らなくてはいけなくて。

Takuji:それは歌詞もあって?

Yoko:インストです。『みにくいアヒルの子』って物語があるじゃないですか。それを何人かで分けて、場面ごとに曲を作るということをやりました。

Takuji:今も憶えてる?

Yoko:何となく憶えてますね。

Takuji:今聴いて、できはどう?

Yoko:なんかすごく、子供のくせにオリジナリティないなって。

Takuji:(笑)。

Yoko:何かの真似してる感じがあって。もっとちっちゃい頃だったらよかったのかな。先生を意識してたのかも。

Takuji:誰かに「こう思われたい」とかいうのって、たいてい相手に通じないよね。

Yoko:(笑)。そうですね。何なんでしょうね、あれは。

Takuji:意外なリアクションの方が面白かったりする。

Yoko:そう思われたいと思って思われたこと、確かにないです。それはとても真実。

Takuji:思われたいっていうのは、つまりは下心だから。

Yoko:そうなんですよね。

Takuji:ロックでもバラードでも、「こうだー!」って気持ちが真ん中にないとね。しっかりした重心がないと、曲ってぶれるよ。

Yoko:重心がしっかりしてたら、反応も強いものが返ってきますか?

Takuji:さまざまだね。聴く側にも体調があるじゃない? その日の気分とか(笑)。

Yoko:そうですね。

Takuji:聴く側の問題は別に置いておかないと、曲は作れない。できちゃった後で、「この曲はどういう風に受け止められるんだろうな」って思うことはあるけど。100人いれば、100通りの受け止め方があるじゃない? それを「こう受け止めて欲しい」っていうのは、作り手のわがままかもしれないな。希望はあるけどね(笑)。


Takuji:梅津さんとの出会いは?

Yoko:梅津さんのライヴに何回か通って、すごい共演したいなと思って、「共演してください」って頼んだんです。Pit Innで。

Takuji:(笑)。すごいね。

Yoko:「じゃあCDを聴いてみます」っておっしゃって、その後連絡をいただいて、「ぜひやりましょう」ってことになったんです。

Takuji:今までにそういうアプローチをした人はいたの?

Yoko:誰かの紹介でってことはありましたけど、いきなり知らないで行ってっていうのは梅津さんが初めてです。やっぱり自分が「この人だ」って思わないと、そういう行動には出れないです。

Takuji:じゃあ、よっぽど何か感じるものが梅津さんにあったんだね。

Yoko:きっとうまくいくっていうのがあって。梅津さんがオープンな人って感じたからだと思うんです。

Takuji:そう感じたのはPit Innでジャズを演奏してる梅津さんでしょ?

Yoko:梅津さんは、歌ものが好きみたいで。

Takuji:変幻自在だからなあ。「今日はこうしたい」なんて思う気持ちに、ぴったり併走してくれるし。

Yoko:読み取ってくれる。すごく勘がいいですよね。

小山卓治さん+羊子

〈真夜中のボードビル〉を聴きながら



Yoko:すごいシンプルなギターですよね。なんかベースみたい。

Takuji:もともとは、すごいハードな演奏でレコーディングして、その後、梅津さんとKIKI BANDでレコーディングしたんだ。すげえハードなジャズロックみたいな感じで。

Yoko:ハードになりそう。

Takuji:この曲をこのスタイルでやる時のテーマは、歌がどんだけシャウトしてもギターはずっとクールに、ボーカルと一緒に吠えない。そのアンバランスで歌う。

Yoko:ああ、すごい伝わってきます。

Takuji:シャウトも、ホットなシャウトとクールなシャウトがあると思うんだ。この曲はシャウトしてるんだけど、どっかクール。秋山さんも自分の声の出し方を何パターンか持ってるでしょ?

Yoko:ありますね。大きく分けたらふたつなんですけど。


※お互いの曲をカバーし合いました。小山さんは「どん」を歌ってくれました。

〈どん〉を聴きながら



Takuji:秋山さんのアルバムを聴いて、どれが歌えるだろうってすごい考えたんだ。アプローチを変えた歌い方をするにしろ、オリジナルに忠実に歌うにしろ、俺が歌って伝わる曲って考えて、この曲を選んだ。でもむずかしかったな。

Yoko:むずかしかったかあ。

Takuji:原曲のよさを壊さずに、さらに自分が歌う理由を見つけられるかって考えた。世の中のカバーっていうのは、オリジナルを越えられないものなんだけど、その曲が持ってる別の側面みたいなものを出すことはできると思う。カバーっていうのは、正面から見るんじゃなくて、ちょっと斜めからその人を見てるみたいなものだと思うんだ。なるべくいい角度から見たい。

Yoko:うんうん。

Takuji:まずは、女性のキーとは違うから自分のキーに合わせるところから始まったんだ。ギターはコードによって音の重ね方が変わるから、イメージがガラリと変わる。どのコードで弾けばこの曲のイメージになるかとか、色々考えたな。

Yoko:ちょっとメロディが違うじゃないですか。ここが好きなんですよ。最後の部分でくり返さなくて短いのもいいんです。

Takuji:「僕はいったい 僕はいったい 何を歌えばいいの」を、「僕はいったい 何を歌えばいいの」にしたんだね。ここをくり返すだけの間を作るのは、すごくむずかしいと思ったから。

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